脳のRAS機能とは? 営業や企画、マネジメントに影響する情報選別の仕組み
私たちは毎日、膨大な情報にさらされています。
そのすべてを処理することは不可能なため、人は意識に上げやすい情報を優先させる仕組みを使っており、それを「RAS」と呼びます。
今回は、RASによる情報の選び方の仕組みと、仕事の成果や判断力の関係性について解説します。
RAS(網様体賦活系)とは?
「RAS」とは、脳幹に存在する神経ネットワークの総称で、日本語では「網様体賦活系」と呼ばれています。
人間の脳は、外界から入ってくる情報をすべてそのまま受け取っているわけではありません。現実には、目に映っているもの、耳に入っている音、肌で感じる刺激の大半を意識に上げることなく捨てています。
その取捨選択を支える役割を担っているのがRASなのです。
脳が情報を選別する仕組み
RASの基本的な役割
RASの本質は、「意識レベルの調整」と「情報の通過制御」です。
脳全体のスイッチやボリューム調整の役割を担っており、意識に上げる必要がないと判断したものを遮断します。
この処理は、意識に上がる前の無自覚な段階で行われるため、本人は気づきません。
五感すべてに関与する情報フィルター
RAS機能は視覚や聴覚だけに作用するものではなく、嗅覚、触覚、味覚を含む五感すべての情報が、このフィルターを通過しています。
例えば、騒がしいカフェでも自分の名前が呼ばれると反応できる現象があります。
これは聴覚が特別に鋭くなったわけではなく、「自分に関係がある情報」とRASが判断したため、音が意識に上った結果です。
同じことは視覚情報でも起きていて、営業成績を伸ばしたい人は、街中で競合の広告や値下げ情報に目がいきがちです。
一方、新規事業を考えている人は、普段なら気にも留めないサービスや店舗の仕組みに自然と目が向きます。
RASがうまく機能していないとどうなるか?
RASが適切に方向づけられていない状態では、何が重要かわからず、すべての情報を同じ重さで受け取ろうとするため、思考が散漫になります。
この状態に陥ると、判断に時間がかかったり、優先順位が定まらなかったりするため、たとえ行動量が多くても、成果につながりにくくなるのです。
しかし問題は努力不足ではなく、RASが「何を重要視するか」という基準を持てていないことです。
RAS機能を理解し、自身が何を重要と認識するかを意図的に設定できるようになると、判断が軽くなり、行動の迷いが減ります。
重要なのは、RAS機能は生まれつき固定された才能ではないという点です。
脳の仕組みである以上、使い方を理解すれば、仕事の質そのものを変える力になります。
RAS機能が仕事の成果に直結する理由
情報過多の時代に起きている脳内問題
現代のビジネスパーソンは、常に情報にさらされています。
メール、チャット、社内ツール、SNS、ニュース、業界情報、競合の動きなど、一日を通して、脳に流れ込む情報量は過去と比べものになりません。
多くの人が勘違いしやすいのが、「情報が多いほど有利になる」という考え方です。
情報が増えれば増えるほど脳は負荷を受け、常に頭が疲れている感覚が抜けない、考えている時間が長いわりに結論が出ない、何から手を付けるべきか迷い続けるなどといった問題が起こります。
これは意志が弱いからでも、集中力が足りないからでもなく、脳の入口であるRASが、情報の取捨選択をうまく行えていないだけなのです。
成果を出す人ほど「見えている情報」が違う
仕事で成果を出している人と、努力していても成果が出ない人の違いは、行動量や労働時間ではなく、「そもそも何が見えているか」にあります。
成果を出す人は、全体の中から本質的な情報だけを自然に拾っており、重要でない情報は最初から視界に入っていません。
例えば、同じ会議に参加していても、成果を出す人は話の流れの中で出た違和感や数字の裏にある前提条件、誰が決定権を持っているのかに意識が向きます。
一方、成果につながりにくい人は、発言の量や資料の細部など、本質と直接関係のない情報に注意を奪われがちです。
判断スピードと意思決定精度への影響
RAS機能は、判断のスピードと精度の両方に直接影響します。
なぜなら、判断とは「選択肢を比較する行為」ではなく、「比較する前に何を候補に入れるか」でほぼ決まるからです。
RASが適切に機能している状態では、選択肢そのものが少ないので決断が早くなりますが、RASがうまく機能していないと選択肢が過剰に増え、どれも正しそうに思えて決めきれません。
ビジネスシーン別のRAS機能

営業でRASがうまく機能する人の特徴
営業で安定して成果を出す人は、「何を聞いているか」が明確で、同じ商談に立ち会っても、受け取っている情報の質が異なります。
RASが適切に方向づけられていると、顧客の言葉そのものよりも、その裏にある意図や前提条件に自然と意識が向きます。
例えば、価格の話が出たときに「高いか安いか」だけで反応するのではなく、「なぜ今その話題が出たのか」「本当の懸念点はどこにあるのか」に着目する状態です。
「売ること」や「説明すること」に固定されていると、相手の変化や微妙な違和感に気づけません。
企画、アイデア出しでのRAS機能の影響
アイデアが出ない状態とは、何も思いつかない状態というよりも、情報が存在しているのにもかかわらず、RASがそれを「関係ないもの」と判断しているケースが少なくありません。
過去の成功事例ばかりを見たり、失敗しないことを最優先に考えたりすると、RASが「安全そうな情報」だけを通してしまうのです。
その結果、可能性のある情報を遮断し、新しいアイデアが出づらい状態に陥ります。
マネジメント層が無意識に使っているRAS機能
マネジメント層になるほど、細かい情報の把握が難しくなります。
しかし、RAS機能によって重要度の高い情報だけが見えていると、すべてを見ていなくても優れたマネジメントが行えます。
陥りやすい失敗は、数字や報告資料だけを見ようとすることです。
マネジメントにおけるRASも、「どの情報を通すか」を決めるフィルターとして機能しています。
RAS機能を活かすための考え方
RASはトレーニングというより、設定される仕組みに近い存在です。
そのため、日々の考え方や目標の置き方次第で、働き方が変わっていきます。
目標設定が曖昧だとRASは適切に方向づけられない
仕事が進まない人の多くは、能力不足ではなく、目標が曖昧なまま行動しています。
「成果を出したい」「評価されたい」「売上を伸ばしたい」といった目標はRASへの指示としてやや弱いです。
RASは現実的で、何を見つければ良いのか、どんな情報を通せば良いのかが具体的でなければ、判断ができません。
「今月は既存顧客からの追加受注を2件取る」「この企画で意思決定者の反応を見る」といったレベルまで落とし込まれていると、RASは関連する情報だけを優先的に通すのです。
日常の「意識の向け方」を変える重要性
RAS機能を仕事で活かすうえで、最も影響が大きいのが日々の意識の向け方です。
これは一時的な集中や努力ではなく、普段どこに注意を向けているかという習慣で、日常的に不満や不安に意識を向けていると、RASはそれに関連する情報を優先的に集めます。
結果として、問題点ばかりが目につき、前向きな選択肢が見えにくくなります。
逆に、改善点や成長余地に意識を向けていれば、小さな変化やヒントを拾いやすくなるでしょう。
同じ環境、同じ条件で働いていても、得られる情報量と質が大きく変わるのはこのためです。
日常の中で、「今日は何を見逃したくないか」「今の仕事で注目すべき点はどこか」といった問いを持つだけでも、RASの働きは変わります。
RASを味方につけて仕事の成果を高めよう

仕事の成果を分けているのは努力量や情報量ではなく、脳がどの情報を通し、どの情報を捨てているかという構造的な違いです。
RASは目標の具体性や日常の意識によって設定されるため、仕事の取り組み方や考え方を変えれば、結果も変わります。
仕事が複雑に感じられるときほど、情報を足すのではなく、何を見なくて良いのかを決める視点を持ってみて下さい。
コーチングは現在、ビジネスの場面をはじめ、プライベートの場面においても広く用いられるようになってきています。
それは、コーチングが人の「強み」を伸ばし、行動化をサポートする新しいコミュニケーションの技術であることが理由かもしれません。この技術の新しさは、相手の不平や不満という負の感情さえも、建設的な力への転化が可能であることです。
さらに注目したい画期的な効果として、コーチングが「違い」を活かし合う創造的なコミュニケーションの手法であることから、
相性や性格、価値観が合わない相手との対応力を向上させることも可能にしてしまう点です。
結果として、自分のコミュニケーション能力の飛躍的な向上やリーダーシップなどの幅を広げることに役立てられます。
コーチングは「自分らしさ」も「相手らしさ」も大切にし、「お互いを高め合う」コミュニケーションの手法ともいえます。
老若男女、職種などに関係なく学習し、さまざまな場面で活用できる技術です。






