アナウンサーに学ぶ「相手に伝わる話し方」
他人に自分の考えを伝えようとする場面は、日常のあらゆる瞬間に存在します。
そんな中で、「丁寧に話しているつもりなのに伝わらない」「誤解されてしまう」「話が長いと言われる」と悩んでいる人も少なくありません。
これは能力の問題ではなく、人が情報を受け取るメカニズムと、話し手が情報を組み立てる順番が噛み合っていないために起こる現象です。
例えば、アナウンサーは毎日数百万人を相手に言葉を届ける職業ですが、瞬時に誤解なく、視聴者の集中力を保ち、必要な情報だけを届ける技術を持っています。
今回はアナウンサーの伝え方を参考に、日常生活で応用できる「相手に伝わる話し方」について解説します。
自分本位の説明は話が伝わらない
伝わらない話し手の共通点は「自分が話したい順番」で話していることです。
自分本位の説明は言語として丁寧だとしても、相手の状況やバックグラウンドを考慮していないと伝わりません。
例えば「このデータは複雑なので、とりあえず全部話します」としてしまうと、資料の背景理解を前提とする人にしか届かないでしょう。
相手に寄り添う話し手は、「このグラフは3点だけ押さえれば全体像が分かります」とまず土台を作ります。
誰に向けて話すのか、相手は何を知っていて、何を知らないのか、どの表現なら理解の邪魔をしないのかを想像すると、同じ話でも伝わり方が全く異なるものになるでしょう。
相手が理解しやすい話の順番
話が伝わらないのは、順番が整理されていないというケースがほとんどです。
脳は新しい情報を受け取る際、まず全体像を探し、その次に背景や具体例を紐づけようとするため、大枠→理由→詳細の順に整理されていきます。
アナウンサーはこの順番を常に意識し、ニュース原稿やインタビュー、スポーツ実況、災害速報などで必ず先に要点を提示し、聞き手の頭に基準点を置いてから情報を積み重ねます。
この基準点がないまま話を始めると、聞き手は「何の話なのか」「重要なのはどこか」を探すための思考が強く働き、肝心の内容に集中できなくなるのです。
人は曖昧な前置きが続くと、相手の意図を推測しながら話を追う必要が生じ、理解が困難になります。
聞き手の集中力は有限で、先に消耗させてしまうと後半の内容が優れていても届かないため、順番を正しく設計することは相手への配慮でもあるのです。
アナウンサーが「本日〇〇で火災がありました」から話を始めるのは、聞き手に最短で状況の軸を渡すためで、その後に原因や被害状況を整理して伝えるからこそ視聴者の頭の中に情報が入ってくるのです。
ビジネスでも同じで、「案件は実施可能です」「A案は採用を見送りましょう」と最初に軸を置くと、会議の参加者はそこから理由や背景を理解する余裕を持つでしょう。
結論→理由→具体例の順番で話すと、聞き手に対してストレスを感じさせず、反応や質問も引き出しやすくなります。
これは特に営業、交渉、面接、セミナーなど多人数の場面で効果的です。
話が長くなる人の共通点は?
話が長くなる人には「思考しながら話している」という共通点があります。
思考と発話を同時に行うと、本人は流れで説明しているつもりでも、相手は途中の情報を保持しながら次の情報を処理する必要が出てきます。
その結果「長い」「まとまりがない」「何が言いたいのかわからない」と評価されてしまうのです。
アナウンサーや優れた営業担当者は理由の後に具体例を置くようにしており、「理由→具体例→まとめ」の順番で話すと聞き手の情報が整理されます。(前述した「結論→理由→具体例」でも良い)
話が長くならないためには、話し始める前にゴールを1文に圧縮することです。
「今日伝えたいのは、AはBの理由で選択して下さい」のように、一言で主題を言葉にできれば、余計なものは自然と削除されます。
話が長い人は情報が多いというよりも、「軸がない」という点が問題なので、軸を先に置けば話は短くなるでしょう。
また、話題が飛んでしまう人は、順番ではなく関係性で話してしまう癖があります。
例えば「Aの資料を改善するためにC案が必要で、その前にBの承認が~」のように飛び石的に話すスタイルなため、話し手の中は繋がっていても、聞き手は話題の接続点を見失うのです。
改善に役立つのは段階分割の技術です。A→B→Cの三段階に分け、「まずA」「次にB」「最後にC」と階層を明示します。
アナウンサーが現場映像や速報を伝える時も、時系列、重要度、場所など基準軸を先に示すので視聴者を迷わせません。
話が飛ばないようにするために効果的なのが、結論に紐づかない情報は切り捨てる習慣を身につけることです。
結論が明確なら、少々話が脱線しても相手は迷いません。
情報を詰め込まない構成が記憶に残る
「情報が多いほど説得力が増す」と考えている人もいますが、情報が増えるほど相手が理解できなくなるケースも少なくありません。
人の記憶は要点、象徴、エピソードに強く反応するとされており、アナウンサーが原稿に不要な形容詞や比喩をほとんど使わないのは、余計な言葉によって視聴者の理解の負荷が増えるからです。
伝えるべき核心を削り落とさずに余計な装飾を排除すると、必要な情報が聴覚的、視覚的に強調されます。
プレゼンでも、聞き手に残るのは「最初の結論」「一番強い具体例」「締めの要約」の三つです。伝えたい内容が膨らんだ場合は、枝分かれした論点を別の機会や資料で補う方が結果的に理解してもらいやすくなります。
また、オンライン会議やSNSなどで行う配信では、聞き手の集中力は数十秒単位で失われると考えた方が良いでしょう。
伝える情報を絞り込み、順番を整えるだけで、あなたの話を「有益」「信用できる」と判断してくれやすくなります。
伝わる話し方の練習

30秒で伝える練習(自己紹介、結論要約)
短時間で要点を伝える能力は、伝わる話し方の基本です。
アナウンサーが最初に訓練されるのは「限られた時間内で必要な情報だけを届けること」で、特に災害ニュースや生放送は一文の遅れが次の情報に重なるため、言葉の構造が常に整理されています。
一般の人でも同じく思考を鍛える簡単な方法が30秒要約です。
例えば自己紹介なら、「私は現在マーケティング部署でSNS分析を担当し、直近ではフォロワー1万人規模のアカウントを伸ばした経験があります。本日はプロモーション戦略についてご相談したいです」というように、最初に立場→実績→目的を配置しましょう。
経験談や背景を長く語ってから目的を述べてしまうと、聞き手の頭に基準点が作られないため、情報が伝わりづらくなります。
話を30秒に制限すれば、余計なエピソードが自然に削ぎ落とされ、聞き手にとって必要な要素だけが残ります。
さらに応用として、あえて15秒版、60秒版を作ってみて下さい。
15秒は要点だけ、60秒は少し補足するというレベルで収まる構造を意識します。
この訓練が定着すると、あらゆる場面で話の順番が迷わなくなるでしょう。
鏡、スマホ録音を使ったセルフチェック
自分の話し方を把握できている人は多くありません。
落ち着いて話しているつもりでも、録音を聞いてみると早口だったり、語尾を伸ばしていたりと、自分の癖に気づくことがあるものです。
アナウンサーは自身の声を客観視するために日常的に鏡で筋肉の動きを確認し、録音を聞いて声の高さや速度、間をチェックします。
ここで重要なのは「聞き手が呼吸する余裕があるかどうか」で、もし途切れず話し続けているとしたら間を取れていない可能性が高いです。
この間は自分だけでは確認できないため、録音を最大限活用して下さい。
アナウンサー式の話し方は誰でも身につけられる

相手に伝わる話し方というのは、アナウンサーだけが特別な才能を持っているわけではありません。彼らが日々の仕事で磨き続けているのは、相手に情報を理解しやすい形で届ける姿勢です。
伝わる話し方は誰でも訓練でき、これが身につくと、他人に自分の考えを伝えることが滑らかなものになります。自分本位ではなく、相手の理解を優先する姿勢で関係性を深めていきましょう。
コーチングは現在、ビジネスの場面をはじめ、プライベートの場面においても広く用いられるようになってきています。
それは、コーチングが人の「強み」を伸ばし、行動化をサポートする新しいコミュニケーションの技術であることが理由かもしれません。この技術の新しさは、相手の不平や不満という負の感情さえも、建設的な力への転化が可能であることです。
さらに注目したい画期的な効果として、コーチングが「違い」を活かし合う創造的なコミュニケーションの手法であることから、
相性や性格、価値観が合わない相手との対応力を向上させることも可能にしてしまう点です。
結果として、自分のコミュニケーション能力の飛躍的な向上やリーダーシップなどの幅を広げることに役立てられます。
コーチングは「自分らしさ」も「相手らしさ」も大切にし、「お互いを高め合う」コミュニケーションの手法ともいえます。
老若男女、職種などに関係なく学習し、さまざまな場面で活用できる技術です。






