
信頼される営業とは? 顧客の心をつかむ営業マンに共通する特徴と行動
多くの人が「売り込む」という言葉について、あまり良くないイメージを抱きがちです。
例えば、「営業」という職業は、商品やサービスを紹介し、契約を獲得するという目的だけを考えると、いかに魅力的に見せるか、いかに上手に口説くかといったテクニックに目が向きやすくなります。
しかし、現実の現場では、無理に売り込もうとすればするほど顧客は警戒心を強め、結果的に信頼を失ってしまうケースが多く、テクニックだけで通用するものではありません。
今回は、顧客の心をつかみ、信頼される営業マンに共通する特徴や具体的な行動について解説します。
営業における信頼の重要性
近年の営業活動は、ただ商品を説明して注文を取るだけの役割から大きく変わっています。
従来であれば営業担当が持つ専門的な知識や情報が優位性となっていましたが、インターネットやSNSの普及により、顧客が事前に膨大な情報を手に入れられるようになりました。そのため、いまや顧客のほうが最新情報や競合比較を把握しているケースも珍しくありません。
このような時代背景の中で選ばれる営業マンは、商品説明の上手さではなく、「安心して任せられる人物であるかどうか」を判断基準にされています。
商品やサービスそのものが優れていても、担当する営業マンが不信感を持たれると契約は成立しません。
例えば、同じスペックや価格帯の商品が複数存在するとき、最終的に選ばれるのは「この人から買いたい」と思ってもらえる営業マンです。
その背景には「自分の悩みを本気で理解してくれている」、「質問や相談に迅速に対応してくれる」、「安心して契約できる雰囲気を持っている」といったものがあります。
信頼される営業マンの特徴は?
誠実さを相手に伝える態度
顧客は「この人は自分にとって信頼できる存在か」を観察しているため、誠実さは営業における最大の武器です。
例えば、不都合な情報を隠さずに正直に伝える、契約に直結しない相談にも丁寧に応じるといった姿勢は、短期的には売上に直結しなくても、「この人なら任せても大丈夫」という安心感を生みます。
数字を追うために一時的に誇張した表現を使うのは簡単ですが、それは長期的にみれば大きな損失を招きます。
小さな誠実の積み重ねこそが大きな信頼を築き、結果として安定した成果をもたらすのです。
清潔感や第一印象が与える効果
心理学の一つに、人は出会って数秒以内に相手を評価し、その印象が長く影響を及ぼすというものがあります。
営業マンにとって清潔感のある身だしなみや整った姿勢は、商品説明以上に大切で、スーツのシワや靴の汚れ、だらしない姿勢は、商品や会社への信頼性まで損なうリスクがあるのです。
逆に、シンプルで清潔な服装や落ち着いた話し方は「丁寧に準備してくれる人」、「自分を大切に扱ってくれる人」という印象を強めます。
特に初対面の商談や提案時には、言葉以上に視覚から受け取る情報が重視されるため、営業マンの第一印象は信頼獲得の入り口だと考えましょう。
顧客の話を遮らない「傾聴力」
営業マンは話が上手い人が成果を出すと思われがちですが、実際には聞き上手、いわゆる「傾聴力」のある人が顧客の信頼を得ています。
顧客が求めているのは、商品を延々と説明されることではなく、自分の課題や不安を理解してもらうことです。
傾聴とはただ黙って聞くだけではなく、相槌や質問を交えながら「あなたの話を真剣に受け止めています」と態度で示します。
顧客の言葉を遮らず、感情や意図まで理解しようと努める姿勢は、それだけで大きな安心感を与え、自然と信頼関係を築いていけるのです。
なお、専門的な傾聴の仕方を身に着けるためには、コーチングの傾聴技法の学習が効果的です。
顧客心理を理解する行動習慣
相手の立場に立って話す工夫
前述しているように、顧客は「自分にとってメリットがあるか」という視点で考えているため、営業マンが自社都合で「この商品は高機能です」、「シェアNo.1です」のようなアピールをしても、顧客が抱える課題に結びついていなければ響きません。
人は「自分ごと」として認識した情報に強く反応するため、顧客の立場に立った言葉選びや説明の工夫が必要です。
例えば、企業向けの営業であれば「このシステムを導入すれば人件費を年間で〇%削減できる見込みがあります」と具体的な数値で伝える、個人向けの営業であれば「この保険に加入しておくと、お子さんの将来の教育費に安心が生まれます」のように、「具体的に自分の生活がどう良くなるのか?」というもの(ベネフィット)を提示するように心掛けましょう。
ニーズを表面ではなく本音から掘り下げる
顧客の中には、初めから自分の本当のニーズを正確に言語化できていない人も少なくありません。
例えば「もっと効率の良いシステムが欲しい」と言っていても、実際には「残業時間を減らして社員の離職を防ぎたい」という本音が隠れているケースがあります。
ここで重要なのは、顧客が語る表面的な要望だけで判断せず、背景にある本当の目的や不安を探ることです。
そのためには「なぜそう思うのですか?」、「理想の状態はどういうものですか?」といった質問を投げかけ、顧客自身が言葉にできていない課題を明らかにしていく過程が大切です。
押し売りと提案の違いを理解する
営業マンに対する顧客の不安は「無理やり買わされるのではないか」という懸念で、この不安を払拭できなければ、どんなに良い商品であっても購入には至りません。
「押し売り」と「提案」の違いは、営業マンの姿勢に表れます。
押し売りは、自身(自社)が売りたい商品を買わせることが目的であり、顧客の状況や感情を無視したアプローチです。
それに対して提案は、顧客にとって最も有益な選択肢を提示する姿勢で、時には自社商品以外の選択肢を示すというようなアプローチです。
提案というスタンスは短期的な数字に直結しない場合もありますが、長期的には「この人は自分の利益を第一に考えてくれている」と評価され、結果として継続的な契約や紹介につながりやすくなります。
信頼関係を築くための具体的行動
定期的なフォローの重要性
多くの営業マンは契約を取った時点で安心し、アフターフォローを軽視しがちですが、顧客からの本当の評価は契約後の対応で決まります。
例えば、顧客からの問い合わせがなくても「その後いかがですか」と定期的に連絡を入れるだけで、顧客は「気にかけてもらえている」と感じ、安心感が高まるのです。
メールや電話、オンライン会議、あるいはちょっとした訪問など、フォローの形は様々ですが、重要なのは「売るため」ではなく「支えるため」に行っていると伝わることです。
顧客が困った時に真っ先に相談される営業マンは、この定期的なアフターフォローを習慣化しています。
約束を必ず守る小さな積み重ね
信頼関係は大きな言葉よりも、小さな約束を守るかどうかで決まります。
例えば「明日の午前中に資料を送ります」と言ったら必ずその時間までに送る、「来週お伺いします」と言ったらスケジュールを徹底して調整するなどです。
これらは当たり前のことのように思われますが、実際の営業の現場では納期の遅れや対応忘れが信頼を大きく損ねる原因となっています。
人は約束を守る相手に対して安心と尊敬を抱く傾向がありますが、一度でも小さな約束を破ると不安が芽生え、後々の商談にも影響してしまうのです。
顧客のメリットを第一に考えた提案の姿勢
営業マンの使命は「自社の商品を売ること」ではなく「顧客の課題を解決すること」です。
この意識を持てるかどうかで、営業マンに対する評価は大きく変わります。
上記でも少し触れましたが、時には自社に利益が少ないプランや、他社のサービスを組み合わせた方が顧客にとってメリットが大きい場合もあります。
そうしたケースでも「お客様にとってはこちらの方が良いと思います」と正直に提案できる営業マンは、顧客から「自分の利益よりも私たちの利益を考えてくれる人」と評価されるでしょう。
信頼はテクニックではなく日々の姿勢から生まれる
信頼は一度の大きな行動で得られるものではなく、小さな積み重ねで形づくられます。
営業の世界で生き残り、成果を伸ばすために必要なのは、派手なテクニックではなく顧客と誠実に向き合う姿勢です。
商品やサービスの良さを伝えるだけでなく、「この人から買いたい」と信頼される営業マンを目指しましょう。

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